霊園の成立

公表されている資料を見ると、「コンサルティング・ファーム」が得たコンサルティング料の巨額さに圧倒されると同時に、Aに群がった「コンサルティング・ファーム」の数の多さと多彩さに驚かされます。 個別に見ていくことにしましょう。
Aが支払った報酬合計五億ドルのうち、最大の収入を得たのは、「モニター・グループ」です。 同社は、第3章で取り上げた「五つの力」や「バリュー・チェーン」の生みの親マイケル・ポーター氏がハーバード大学のビジネス・スクール人脈をもとに立ち上げたコンサルティング・ファームです。
2位は、「マッキンゼー」で、96OO万ドル(約10O億円)、三位は「アンダーセン・コ(現・Aこで、87O万ドル(約9O億円)となっています。 (約130億円)という巨額のコンサル料を得てンサルティングAは、こうした大手コンサルの助言を得ても業績の改善が芳しくないことから、さまざまなテーマについて、中小の特化型コンサルティング・ファームからも助言を仰ぎました。
そして、その数は、なんと10O社を超えたと言われています。 たとえば、第2章で「人事系コンサルティング・ファーム」として紹介した「ヘイ・コンサルティング」は、Aの給与管理システムと役員の業績評価コンサルを行い28O万ドル(約三億円)の手数料を得ています。
また、ニューヨークの中堅コンサルティング・ファームである「デルタ・コンサルティング・グループ」は、企業戦略立案で一18万ドル(一億円強)のコンサルティング料を受け取り、リエンジニアリングを得意としていた「ジェミニ・コンサルティング」はその分野のコン(一億円強)を獲得しています。 サルで10O万ドルいくらAが巨大企業とはいえ、同時に何十というコンサル・チームが会社の中でさまざままプロジェクトに従事しているさまは、まるで蜜に蟻が群がるような異様な光景です。
コンサル業務には機械も工場も必要ありませんから、コンサルティング・ファームにとってみれば、コンサルティング料から人件費を引いた残りが、すべて利益となります。 つまり、Aが支払った年間平均10O億円以上のコンサル料の大半は、これらファームの少数のパートナー問で分配されたものと考えられます。

Aの例は極端にしても、アメリカの大企業では、CEOごとに、あるいは、業績が悪化するたびに、「戦略系コンサルティング・ファーム」を入れて、従前の路線を否定するような戦略を打ち出すことがよく見られます。 また、人事制度の改定を検討する際に「人事系コンサルティング・ファーム」に助言を頼み、システムの入れ替えを計画するごとに「IT系コンサルティング・ファーム」にアドバイスを求める、という光景も日常茶飯事です。
ところが、こうした「コンサルティング・ファーム」を入れたプロジェクトの結果が、必ずしも業績改善や組織改革に結びついていない例も多いのです。 CEOなどの経営者が、株主総会やIRミーティングなどで、「有名コンサルティング・ファームと、グ改革や業務革新のプロジェクトをやっています」と大見得を切り、株主やアナリストからの支持や評価を求める光景がよく見られます。
しかし、数カ月後、あるいは数年後、そのプロジェクトの結果がどうなったかをきちんと総括している例は、あまりありません。 それどころか、上手くいかなかったプロジェクトを上塗りするように、別の有名「コンサルティング・ファーム」を立てて、新規のプロジェクトを立ち上げる、そういったケースすら見受けられるのです。
このように、経営者が本来の職務である「経営」について外部に委託・アウトソーシングし、責任を放棄したかに見える「コンサル至上主義」経営に対しては、多くの批判が寄せられています。 わが国においても、一部の企業において、これと同様の問題が出始めています。
もちろん、経営者側にも言い分はあります。 すなわち、「コンサルティング・ファームに依頼しているのは、解の提示だけであり、実際にそれを採用するかの判断は、経営者の専権事項であり、責任を放棄しているわけではない」という主張です。
つまり、経営のスタッフとして「コンサルティング・ファーム」を利用しているだけであり、彼らに全面的に依存しているわけではない、ということになります。 この主張に同意するとしても、経営者には以下のことが求められることになります。
社内のさまざまな問題について、どれは自力で解決し、どれは外部コンサルに依頼するかを、どのような基準で決めるのか。 外部コンサルに依頼する際に、どのような基準で依頼先を選定するのか。
複数の異なるプロジェクトを、異なる外部コンサルに依頼した場合、相互の整合性をどのように確保するのか。 これらは、いずれもむずかしい問題です。
「コンサルを選定し、マネージ(管理)する機能」が、自社内にあり自力で完遂できるのか、ということであり、かりにこれがないとすると、「コンサルのコンサル」を外部から雇うことにもなりかねません。 こうなると、Aのように、「本来相互に関係のあるプロジェクトが、何の調整も連携もなく、社内に複数走っている」という無政府状態となるリスクすらあるのです。
この観点から、日本でも気になる事例があります。 それは、第1章でもお話しした「国家的大事業」である郵政民営化です。

図表3(8ページ)で示したように、現在、民営化の準備企画会社である「日本郵政株式会社」と、現業を行う「日本郵政公社」が並存して、民営化の準備をしています。 まず、民営化のコントロール・タワーとなるべき「日本郵政株式会社」ですが、その陣容は約8O名(2006年3月現在)で、ホームベージなどでさかんに人材募集をしている状況です。
同社の人員計画は正式には明らかにされていませんが、20O7年10月の民営化直前時でも20O名以下にとどまると言われています。 これだけの陣容で、26万人の従業員を抱える企業の民営化を行うには、どうしても外部戦コンサルティング・ファームの支援を仰ぐ必要があるものと思われます。
本書の冒頭で触れたように、「マッキンゼー」の卒業生であるU氏が同社の役員陣に加わったのも、その端緒と見ることができます。 しかし、民営化の対象となる「日本郵政公社」には、問題が山積しています。
たとえば、「郵貯バンク」という世界最大の銀行になる予定の郵便貯金事業や、世界有数の保険会社となる簡保事業では、驚くべきことに、会計のイロハである複式簿記が行われていまいわば、江戸時代の商家よろしく、大福帳方式で帳簿が付けられている状況だっせんでした。 この嘘のような本当の話を、20O5年2月16日に行われた日本郵政公社生田総裁の定例記者会見の発言で確認してみましょう。
今、公社の決算会計といいますか、経理といいますか、どういうふうになっているのかというのを、かいつまんで言いますと、公社化前は官庁会計だったわけです。 それは、計理日主義であり、現金主義であり、単式簿記。

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